NEWS / BLOG

4月8日の西日本新聞の記事に女性議員に対するハラスメントの記事が掲載されていました。

実に由々しき問題です。こうやって取り上げることで、これを許さない風潮が広まってくれれば、政治家を目指す人が増えることにも繋がります。ぜひ、徹底した対策を求めたい。

が、同時に議員秘書の実態についても調べてほしいと元議員秘書として痛切に思うわけです。

これは全くの肌感覚ですが、議員に対してよりも実は秘書の方が被害を被っているのではないかとも思っています。

私は、大学を出てからすぐ、地方議員のボランティアスタッフを皮切りに区議会議員、都議会議員、衆議院議員、参議院議員と約20年にわたり各級議員のスタッフや秘書を勤めてきました。右から左に党派を超えての秘書仲間もいますし、福岡に来てからも交流を持っています。国会対策を担う永田町と選挙地盤培養に奔走する選挙区という秘書としての生態がまるで違う双方を経験してきました。それなりに秘書というものの実態は把握しているつもりです。

地方議員はともかく、国会議員の場合だと直に有権者や支援者と接触する機会は、秘書の方がはるかに多い。国会議員は国会会期中は永田町に缶詰めになりますので、その間は支援者・有権者とのやりとりはほぼ秘書を通じてということになります。「国会議員のあいつのことはよく知らないが、秘書のお前が頑張ってるから応援するよ」なんてことを言われるのはザラで、それがある意味秘書冥利に尽きたりする。ですので、選挙区を駆けずり回っている秘書と支援者というのは濃密な関係性を築くこととなるわけですが、そこに付け込まれてハラスメントに発展することがまぁ多い。

無茶な陳情事に振り回される。

夜中に呼び出される。

携帯にすぐ出ないと罵声を浴びる。

休みを取っても「俺は働いてるのに」と怒られる。

事務所に押しかけて何時間も居座る。

飲みたくない酒を飲まされ、デュエットを強要され、宴会芸を求められる。

抱きつかれ、撫でまわされ、時には脱がされる。

これらは、ハラスメントか。それとも業務の一環か。秘書の中でも受け取り方は違うと思います。字面で見れば即アウトでしょうが、「これしきで親分の支持を獲得できるならちょろいもんよ」と喜んで業務(?)に励んでいる秘書が大勢いることも事実。実際、私の周りの秘書達も「え?こんなこと当たり前でしょ、秘書だもん」と涼しい顔で対応し、議員の支援者拡大に貢献してきた猛者が多かったわけですが、一方でこういったことを何事もないかのようにこなせない秘書はフェイドアウトしてしまう。

支援者・有権者に対して秘書というものは実に立場が弱い。自分が議員本人なら支援者・有権者の要望に対してどこまで呑めばいいのか判断できますが、それが秘書となると、自分の言動が直接親分である議員に影響するわけですからどうしたって必要以上に下手になってしまう。「秘書が使えないから、お前は応援しない」などと親分である議員が支援者から言われようものなら、秘書としてこれ以上の屈辱はありません。そして、間違いなく議員から「ダメな秘書」のレッテルを貼られてしまいます。議員のために、そして自分の秘書としての評価のために「自分さえ我慢すれば」と本能的に思考が働いてしまい、「それは無理だよ…」と自分の限界値を超えているようなことも、「議員のためになるなら」と受け入れざるを得なくなる。自分自身のことならまだいいですが、結局「議員」という親分とはいえ「他人」のために無理な要求を呑もうとするわけですから、葛藤にさいなまれたり、時には心身のバランスを崩す時もあります。優秀なのに耐えられなくて秘書業から足を洗った人をどれだけ見てきたか。

もちろん議員が自分の部下である秘書がそういう目に遭っていたら、秘書としての立場を慮って支援者だろうがなんだろうがぴしゃりとやってくれれば一番いいわけですが、しかし、秘書というのはそういったことを議員に報告なんてしません。自分で何とか折り合いつけて処理しようとします。なぜなら「議員に迷惑かけちゃいかん」という思考が働くから。だから私もよほど私生活を脅かすようなことが無い限り議員に報告などしませんでした。

そして、これが一番問題かもしれませんが、当事者の誰もハラスメントと認識していない。

まず、支援者にハラスメントのつもりがない。                                                                「こっちは、あなたたちにお願いされて、政治資金を寄付して、パーティー券買って、集会あれば人を動員して、票入れてるんだもん。それぐらいやってよ」となる。

そして、議員はそんなこと起きていることも知らない。                                                            「こっちは政策立案から議会対応、党務もある。実に忙しい。秘書は議員と有権者の接着剤なんだから、選挙区対応は任せた」となる。

最後に、秘書自身が「これは業務の一環」と思い込んでいる。                                                         「親分が選挙に勝つためならこんなことは小事。選挙までの期間限定だし、ここが踏ん張りどころ」となる。

これでは、ハラスメントとしての事実が露呈しようもありません。                                                        秘書というのは「裏方」「縁の下の力持ち」「懐刀」「影武者」などと言われますが、お気づきの通り、どうも裏や下や懐などと暗くてひっそりとした場所で力を発揮するようになっているようです。それに加えて「秘書の秘は秘密の秘」などというものですからあからさまに声を上げることもしない。ですので、ぜひマスコミや学術機関などで客観的な実態調査をやっていただきたい。そして、世間に知らしめて欲しい。

「9時に来て5時には帰ります。そして事務所を出ればプライベートですので支援者からとはいえ携帯には一切出ません。支援者との飲み会も行きたくない飲み会には行きません。あ、それと何があっても週休2日は取りますからよろしく」という人間が秘書として相応しいかどうかは疑問ではありますが、業務にしろ人間関係にしろ仕事とプライベートの境界線が曖昧で24時間365日常に気を張ってなくてはいけない仕事というのはどう考えても普通ではない。                                                もちろん、ハラスメントとは受け手がどう解釈するかが大きなポイントですから、全ての秘書がハラスメントに晒されているとは言いません。生活どころか人生全てをかけて自分の親分のために身を粉にして働くという秘書もいっぱいいるでしょう。それはそれでいい。そういう人たちはぜひ、生活、人生どころか命を懸けて親分のために頑張ってほしい。            しかし、前にも書いたように、秘書という独特の労働環境に付いていけずにこの世界から脱落していく人たちが本当に多い。これは何とかしなくてはなりません。親分議員の選挙結果によって収入はおろかその身分までどうなるか分からないという不安定さだけでも十分リスキーなのに、ハラスメントをハラスメントとも思わず命を懸けて業務に邁進する秘書だけが「デキる秘書」として生き残るような世界だとしたら、本当に優秀な人材が秘書という仕事に憧れて集まってくるわけもありません。

議員秘書という仕事はやりがいのある仕事です。本当です。

日本を良くするために自分の親分を議会に押し上げる。そのために知恵を凝らし、選挙を戦うための環境整備と段取りを行う。時には政策アドバイザーとなり、時には選挙参謀となり、日本や地域のために議員とスクラムを組んで活動に励み厳しい選挙を勝ち抜く。政治という生き馬の目を抜く世界の最前線で働くダイナミズムは相当な充実感を与えてくれます。

そんなやりがいのある議員秘書という仕事でも、「あいつ、一週間持たなかったね」「あの人いつの間にか消えたよね」という秘書がいればそのイメージが先行してしまう。秘書の職場環境というのは、もちろんそこの議員に全責任があるわけですが、秘書と密接にかかわる支援者さんにも「ハラスメント」の意識は持ってほしい。支援者がつぶやく些細な一言でも秘書がどれだけ気を揉むのか、立ち話程度のお願い事でも秘書がどれだけ右往左往するのか、秘書から見た支援者さんの立ち位置というものを少しでも理解してもらえれば、議員秘書の労働環境は大きく変わります。

議員秘書という仕事が「先細り」にならないよう、願うばかりです。

 

 

コメントは利用できません。