地方議員の大事な役割。これをなんだか皆さんご存じでしょうか。
それは、行政をチェックすること。つまり、首長(市長)以下、市の職員がきちんと市民のために仕事をしているのか、事業は本来の目的通りに遂行されているのか、税金の使い方にムダはないのか、これを監視することが大きな役割の一つです。                                      そのために議会が最低年4回定例会として開会され、予算決算をチェックする特別委員会が開かれます。そこで議員は議案質疑、一般質問、予算決算総会質疑などを通して行政に質問し、事業の目的や意義、市政の課題などについて行政側と議論を交わし、それを行政側は市政に反映させるのです。

この「質問」というのは実に奥深く、その場の思い付きでやるのではありません。「議場での質問はパフォーマンス」「ただの儀式」という批判は承知の上で、事前に行政側と答弁調整をし実りある質疑になるよう、行政側としては間違った答弁をしないよう、みっちり調整するわけです。これは行政側も真剣です。議事録に残る答弁をいい加減にするわけにはいきません。整合性が合わないことは絶対に言えませんから、一言一句、細かいところまで局一体で答弁を考えます。これについては、以前にもブログを書いていますので、そちらをぜひ。

そんな議会質問ですが、私はよく「カリカリしている」と同僚議員からからかわれることもあります。確かにカリカリしています。要するに行政側に厳しくあたりすぎるということなんですが、それは仰る通りです。しかし闇雲にカリカリしているわけではなく、一応理由があってカリカリしています。

今回の議会も10月3日に決算総会質疑で質問に立たせていただきましたが、ここでもやはりカリカリしていました。写真の顔を見てください。実にカリカリした顔です。                 では、私は何に怒っていたのでしょう。ご説明したいと思います。

まず、大前提として我が会派「福岡市民クラブ」は議会内野党なのです。これだけで、説明がつくぐらいの理由ですが、要するに「市長、今のままじゃいけませんよ!」の姿勢なわけですから、ヘラヘラ質問していてはいただけません。(だからといって与党の議員がヘラヘラしているわけではありません)厳しい態度で臨まなくてはいけません。そりゃ、カリカリもします。「お前、さっき質問は事前調整してるって言ってたじゃねぇか。じゃあ、そのカリカリも演技か」という声が聞こえてきそうですが、正直言ってそれは全否定はしません。カリカリポイントは事前の調整で分かっています。でも、人間ですので、本番で答弁を聞いているうちに怒りが再燃することはままあります。なので、議場でもあんな顔になります。

では、今回の質疑で私がどこにカリカリしていたのか。                     

今回私が質問したのは大きく分けて2つの点。一つは福岡市令和4年度の決算状況と分析。         こちらについては、カリカリポイントはありません。福岡市の財政は極めて良好です。          市債残高(借金)も着実に縮減できています。当然、公共事業や市有施設の維持補修のために市債(借金)は毎年のように起債しますが、返済額の方が上回っていますので残高は年々減っています。歳入(収入)も過去最高を更新しました。人口が増えているので個人市民税は増収。福岡市の土地価格も上がっているの固定資産税も増収。言うことありません。(固定資産税が上がって困る人がいるという問題は横において)                   市の健全化判断比率(財政の再生の必要性を客観的に示す指標)も全て基準以下で問題無し。自治体の財源に余裕があるかどうか判断する財政力指数もノープロブレム。文句なしです。              しかし、将来的には不安が残る点もチラホラあります。福岡市は今は人口も増えていますが、すでに少子高齢化は進んでいて、しかも2035年からは人口減少に突入します。つまり、労働人口はこれから減り、全体の人口も減る。つまり納税者が減ることになりますからそのうち税収減に転じる可能性が高い。さらに、福岡市は昭和40年代から50年代に市営住宅や道路、橋梁、学校を急激に整備していったので今後それら施設が耐用年数をどんどん迎え、今後は建替えや維持補修に多額の費用が必要となります。さらに、警固断層を震源とする大地震がほぼ間違いなく起きるとも言われているので、防災体制の一層の整備が必須です。近い将来「収入は減るのに支出は増える」状態に陥る可能性があるのです。そこは、しっかりと見通しを立てた上で、現在の好調な福岡市経済に甘んじることなく規律ある財政運営をするよう議員として求めました。

で、ここからが私のカリカリポイントです。                              質疑中もここから一気にギアが上がります。                             前述の財政状況の続きから言うと、福岡市の特徴の一つに「異常に低い人件費」というものがあります。一般会計に占める人件費の比率が12.4%。これは他政令市と比較しても突出して低い。     

なぜか。これは、本市の財政運営プランに基づいて「技能労務職」をどんどん合理化していった結果によります。                                         「技能労務職」とは、市の職員さんの中の給食調理員や学校用務員、ごみ収集員、土木作業員などの行政事務を担当しない公権力を行使しない職員さんということになりますが、こういった職員さんを減らしていった結果です。                                    どうやって減らしたかというと、まず全体的に言えば「退職不補充」。                これは読んで字のごとくで「定年退職で人が減っても、新人さんを採用しません」ということ。これを進めるだけでも年を経れば徐々に徐々に減っていくわけですが、さらに今の時点で技術労務職にある人を少しづつ減らしていく方法もとっています。                        まず一つは「民間委託」。少し詳しい方ならお分かりかもしれませんが「民にできることは民に」のあれです。                                          次に、正規職員ではなく会計年度任用職員への移行。ものすごく砕いて言うと、「正社員からパートに変えました」ということになります。                                 最後に「行政職化への移行」。これは、ごみ収集など「現場」で専門技術を活かして働いていた人を、いわゆる他の公務員と同じように本庁勤務や配置換えができる状態に変更すること。           この3つの方法でどんどん技能労務職員を減らしていった結果がこの「異常に低い人件費」に繋がっています。これだけ聞くと、「え?いいことじゃん、人件費減ってんだし」ということになるかもしれませんが、そんな単純な話ではありません。

その結果、市民が享受すべき行政サービスが低下している。それが私の課題意識でした。       例えばゴミ収集。福岡市は一般家庭ごみは民間事業者が収集をしています。これはもう長い歴史がありますから、これはいい。問題は学校や公民館などの市有施設などから出るごみの収集。これは市直営で「環境業務員」という技能労務職の方が行っていましたが、これも民間事業者に委託されるようになりました。その結果、即応性が無くなってしまいました。民間に委託するということは委託料が発生しますので、どうしてもお金がかからないように出動回数を減らさなくてはいけません。なので、ごみが一定量貯まるまで施設内で保管しておかなくてはいけません。「壊れた机一個回収に行くのでは人件費やガソリン代がもったいない、どうせ行くならもっと貯まるまで待っててよ」となるわけです。これだと確かに効率的ではありますが、ただでさえ子どもが増えて学校施設はぱんぱんなのにごみのために部屋や倉庫を確保しなくてはいけません。しかも子どもが面白がって遊んでけがなどしないように保管も徹底管理しなくてはいけません。置いとけばいいという話ではないのです。その徹底管理をする教師だって今は超多忙です。これでいいのでしょうか。                           そして問題がもう一つ。民間業者に委託するということは行政の目が届きにくくなります。契約通りに業務を遂行しているのかいちいち確認していられません。そのため、実際に契約通りに業務をしていない業者の存在も私の質問で明らかになりました。学校のごみ収集には「必ず2人で行くこと(子どもがごみ収集車に近寄って危険な目に遭わないように)」となっているにもかかわらず、業者が一人でごみ収集車で学校敷地内に乗り込んでいるとの情報提供があり、それを質問でぶつけてみましたが、このことについて市も認めました。しかも、所管局である環境局はその契約不履行の状態を把握していながら民間業者に確認も指導もしていない。こんな状態で子どもが巻き込まれたら誰の責任なのか、その責任範囲も不明確。

そして、学校用務員についても。                                 学校用務員は私たちが子どもの頃は必ず一人はいたものでしたが、福岡市は「退職不補充」と「会計年度任用職員への変更」の方針を取っていますので、毎年のように人数が減り、現在は「拠点校制度」つまり一校一人ではなく「二人で三校」などの状態です。なので、当然、何かことが起こった時、例えば水道の水漏れ、ガラスの破損、など緊急性が必要な時でも用務員さんがいないからすぐにできない。または教職員が対応するといった状態になっています。                        さらには、これも質問で明らかにしましたが、令和5年に新規で学校用務員になった方は全員会計年度任用職員さんで平均年齢は約64歳。若い人材が入ってきていません。学校用務員はOJT(仕事をしながら技術を身に付ける方法)となっていますから、60歳を超えてから一から技術力を培わなくてはいけません。これでは到底、学校用務員の貴重な技術継承がなされるとも思えない。学校用務員さんというのは、学校備品・施設に対する専門知識や修繕能力、運動会などの備品を一から作る制作能力が必要な極めて専門性が求められる職種なのに、このありさま。               

こういった点について、質疑をしましたが、やはりというか当局との一致点を見出すことができませんでした。私には「削減ありき」でがむしゃらに技能労務職を狙い撃ちにして人員減らし、その結果生じる不都合には蓋をして「福岡市は最低限の公務員で市政運営をやっています!」を対外的にアピールして点数稼ぎをしているようにしか映りません。                                       職員の合理化効率化はもちろん必要です。福岡市の職員だけが安泰で優遇されるのでは今の厳しい経済状況の中、市民の理解は得られません。しかし、だからといって行政サービスが落ちていい理由にはなりません。人が必要なところにはその適正に応じた人員をきっちり配置すべきなのです。                                        効率化というのは、ただ人を減らすのではなく、人事や財務の柔軟性によって無駄な業務を省き、業務運営上の工夫やICT化によって、職員一人あたりの生産性を高めることが本当の意味での効率化あり、それによってコスト削減が実現されます。と、私は思うのですがここが行政側と噛み合わない。というか、行政側もそれは重々承知の上の現状の人事策を取っていると言いたいのかもしれませんが、噛み合わない。なので、私は今回の質問中盤から最後までカリカリしっぱなしでした。

もちろん、「行政が自分の言うことを聞いてくれないから」といった幼稚な理由でカリカリしていてはいけません。感情論で行政をこき下ろすようなことがあってもいけません。もちろんそんなことはやっていません。                                         しかし、「市政の現状にこういった課題があるから、これを何とかしてくださいよ」を言っても、お役所答弁でのらりくらりでかわされるとさすがにカリカリしてしまうのです。役所には役所の言い分、理屈があることはよく分かっていますが、こちらも有権者の声を届ける義務があります。

そして前にも言った通り、私は野党。重箱の隅をつつくような揚げ足取りをしていてはいけませんが、これは課題だと思ったことは誰に遠慮することなく真正面から行政にぶつけていきます。

先日決算議会が終わったばかりですが、もう12月にはまた本年最後の定例会が始まります。そして今度は一般質問に立つ予定です。またもう少ししたら、一般質問の質問作成に取り掛からなくてはいけません。きっとまたカリカリすることになるかと思いますが、それは真剣に市政に向き合っている証とご理解いただければと思います。

因みに、まだ12月何を取り上げるか決まっていませんので、市政に何か物申したい方いらっしゃいましたらどうぞ教えてください。                                      

 

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