6月議会で一般質問の機会を得ました。
さて、何をテーマにするか…
日頃から、あれをやろうこれをやろうと無意識に頭に思い描いてますので、困ることはないのですがどうせやるならタイムリーなことをやりたい。

そこで思いついたのが「河川」。
毎年、梅雨時になると頻発する河川氾濫の問題もありますし、何よりも最近はそれを踏まえてか河川に関する市民からのご相談、陳情がまぁ多い。
ですので、こここは一つ、まとめて議場で執行部にぶつけてみようと、「河川」をテーマに据えました。

ただ、河川と一言で言っても色々とあります。ですので、今回は中でも相談が多かった「治水対策」と「河川ゴミ」について取り上げました。
本日は、一般質問の質問と当局の答弁を元に、皆さんに河川のお話をしたいと思います。まずは治水対策について。

そもそも、皆さん、河川の種類と管理者、これをご存じでしょうか。
一級河川、これはよく知っていると思います。でっかくて、川幅が広くて、河川敷にでっかい看板が出てて、のあの川です。
筑後川、利根川、信濃川、吉野川・・・ 名前がすぐに出てきますね。この一級河川は国、つまり国土交通省が管理者となります。
そしてその一級河川の他には県が管理者の二級河川、市町村が管理者の準用河川及び普通河川があります。
そして、それぞれの河川管理者は、洪水などによる災害の発生防止や、流水の正常な機能の維持などについて総合的に管理を行います。

しかし、これが複雑な話の第一歩なのですが、県が管理者である二級河川を市が改修工事をしている場合があります。
なぜかというと、二級河川については、周辺のまちづくりと一体となった河川整備を行うため、河川法の規定に基づき、県との協議により区間を定めて、市が河川改修や維持修繕を行うことができるからです。
どうせ整備するなら、より市民の声が届きやすい市がやった方が効果的ということですね。
そして、その整備には「改修」と「維持管理」の大きく分けて二つがあります。
では、どんなことをやっているのかと言えば、改修については河道の拡幅や掘削等、灌漑用途が廃止された農業用ため池を雨水の流出抑制を図る治水池として整備する。
維持管理については、排水機場等の河川施設の日常点検や、護岸等の状況把握、河川の流水機能を確保するための浚渫や除草など、こういったことが行われています。
ここまでは基礎知識の確認。まずは、ここを押えた上で以下からは具体的に話を進めていきます。

そこで、まず、市民からの要望➀「浚渫をやってくれ!」
この写真見てください。これは、西区の七寺川の写真です。もはや川には見えませんね。眩しいぐらいの緑、ただの草原です。

要望というのは、「この川大丈夫なんかい?まさか、氾濫せんよね?」「頼むから草刈ってくれ」というご相談です。
実は、こういう川について、草自身が水流の妨げになることはそうないらしいです。何がいけないかというと、その下にある土砂の堆積。これが問題なわけです。土砂が堆積して水流量が減るので氾濫すると、そういうメカニズムです。
なので、草の多い少ないはあまり影響はないらしいですが、とはいえ市としても、当然、この状況はよろしくないと考えているわけですが、いかんせん予算が無いもので一気に浚渫事業を進めることができない。
ですので、一年で浚渫できる河川を選別し、さらにはその川全体ではなく部分的に浚渫事業を進めていきます。
どこの川をどのように浚渫するかは専門家の意見も参考にしながら決定されますので、当局としても今のところは浚渫事業はうまくいっていると解釈しているようです。
確かに、これまで浚渫の不備により河川氾濫を引き起こしたということもありませんので、そう解釈するのも無理はないかもしれませんが、しかし実際に不安に思っている市民も多いわけですし、昨今の雨の降り方を見れば「今まで大丈夫だったんだからこれからも大丈夫」ということはあり得ません。
何とか浚渫事業をもっと進めてほしいのですが、どうも行政というのは「備えあれば憂いなし」という発想に乏しいらしく、「何も起きなければ金かけてやった備えが無駄だったと言われる」という考えが先行してしまうようです。
そこで、「これまでのやり方で大丈夫」と楽観視せず、予算をしっかり確保して浚渫を行い、万が一にも氾濫を起こすことが無いように一般質問の場で担当局に要望をしました。

因みに、上記の七寺川は国が創設した「緊急浚渫事業」による交付金を活用して浚渫が行われるようになりました。国のお金がないと浚渫できないという市の財政状況も問題ですが。

次に、市民からの要望②「室見川が怖い!」

室見川は近年、何度も氾濫の危険にあっていますが、川沿いに住んでいる方も多く、何とかならないかという声が多く聞かれていました。
確かに、家の目の前がこんなになれば怖いですよね。
しかし、この室見川は二級河川ですので県が管理者となります。つまり、治水対策を行う義務は県にあるわけですが、これが一向に進んでいない。
そして、ここからまたややこしい話になりますが、
福岡市域内の二級河川の治水対策については、平成9年に改正された河川法に基づき、福岡県が長期的な河川整備の目標を定める「河川整備基本方針」及び、20~30年程度の中期的な具体的目標を定める「河川整備計画」を順次策定し事業を実施しているのですが、室見川にはこの基本方針も整備計画も何も策定されていません。そして、この二つのうちいずれかがないと原則、河川改修できません。
じゃあ、どうするの?となりますが、その場合は平成9年の法改正前に策定された「工事実施基本計画」に基づいて行われることになっています。
が、しかしです。実は、室見川はその「工事実施基本計画」に基づいた工事も行われていないのです。確かに室見川の「工事実施基本計画」はありますが、工事は何にも行われていないのです。
なら、あのたまにやってる室見川の河川工事は?と思われるかもしれませんが、あれは少し意地悪に言えば、場当たり的にやっている浚渫工事です。
つまり、室見川を氾濫させないように、科学的見地やデータに基づいた抜本的な大掛かりな河川整備は何にもされていないのです。
「もう近年は毎年のようにハラハラさせられているのに?何にもやっていないの?」私はこの話を聞いた時にはただの驚きしかありませんでした。
そして付け加えて言うと、県は今、室見川の「河川整備基本方針」を作成中としてますが、いつまでにできるのか明確に示していません。
先ほど「備えあれば憂い無し」の話をしましたが、福岡県の役人がそう考えているのかどうかは知りませんが、こんなに毎年危ない目に遭っているのに、こんな悠長なこと言ってていいのでしょうか。
由々しき事態、と少なくとも私は思っています。
「でも、それって県が管轄の話でしょう?福岡市議会議員のお前がどうこう騒ぐ話ではないんじゃない?」ということで以下に続くわけですが、

市民からの要望③「県から市に河川管理の権限を移してよ!」
室見川の例からお分かりだと思いますが、福岡市民がどれだけ「うちの側の河川氾濫しないの?」と不安に思っていても、それが二級河川であれば、市は何にもできないのが現状です。
だから、市は黙って見ているしかないのか、となるかと思いますが、実はそうではなくて、河川の権限というのは県と市が協議して合意すればその管理権限を移すことができるのです。
3月の補足質疑でも「県から市への権限移譲」について質問しましたが、その際に、国の法改正により県から市へは34の事務移譲が可能とされていることが明らかにされています。
そして、その事務の中には「河川の権限」が含まれている。
そこで今回の一般質問で市に対して二級河川の権限を移譲してもらうよう要望したわけですが、これは私だけの突飛な意見ではなく、過去の福岡市議会でも河川の権限移譲を求める質問は会派を問わず行われています。
では、県との協議は現在どうなっているのかと言えば、結論から言うと何も進捗していません。
まぁ、県だって持っている権限は手放したくないでしょうし、市だって権限だけもらってもそれを実行するための財源も一緒に移譲してもらえなければどうにもできません。要するにお互い消極的なのです。
何より、権限移譲というのは多分に「政治的要素」を含んでいますので、事務方(いわゆる県や市の役人)にできることは限られます。知事と市長によるトップ同士の合意形成ができるか否かがカギとなるわけです。制度論的議論よりも政治的なアプローチが必要です。
少し脇道に逸れましたが、河川に関して言えば、福岡市は準用河川改修事業や都市基盤河川改修事業などを通じて二級河川管理のノウハウを持っています。
また、4月に国会で成立した「流域治水関連法案」の関係もあります。
少なくとも市内で完結する(流域が複数都市に跨らない)二級河川については、福岡市が市民の意見を尊重しながら責任を持って管理できるようにするべきだと思っています。

今回の一般質問では、七寺川や室見川の例を挙げながら、福岡市の河川治水対策について質問と要望をしました。
繰り返しますが、行政が「今まで大丈夫だったんだから、これからも大丈夫」と胡坐をかいていたら、そのうちとんでもない目に遭います。
天神や博多の再開発もこれはこれでいいですが、再開発しなかったからといって直接的に死者が出ることはないわけですから、命や生活を失わせるような脅威にはしっかり予算を付けて対策を立ててほしいものです。

市民にとっては自分の身近に流れている川の河川管理者が誰で工事実施主体が誰かなんてどうでもいいことです。
「誰でもいいから何とかしてくれ」これが正直な市民感情でしょう。
その市民感情にどう応えるのか、それを模索し提案し実現していくのが行政と議会の役割です。
あそこは県だから、ここは市だからと言ってる間に河川氾濫が起きようものなら、一番の被害を受けるのは市民です。それだけはあってはいけないと強い危機感を持っています。

今日は、少し小難しい「河川の管理と権限」について書きました。
次回は、もっと身近でもっと分かりやすい「河川ゴミ」について。
河川ゴミは社会的にも問題視されているのに、行政の動きは少し鈍いのではないかと多少の怒りを持ってご報告します。

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