まず、真っ先にお断りしておきますが、私は福岡市消防を応援しています。
市民の安心安全のために命を懸けて任務に就いている消防職員には心より敬意を表したい。
何より弟が消防士ですし(他都市ですが)、どういうわけか知り合いにも消防士や元消防士が多い。ついでに言えば、福岡市消防局長は高校の先輩。
任務の厳しさ、職員としての使命感、現場の過酷さ、よく聞いています。ですので、誠に勝手ながら親近感を覚えています。
ただ、福岡市消防局は紛れもなく市の行政機関の一部局です。行政機関である以上、議員としてはモノ申さないわけにはいきません。
ということで、この度の3月議会での補足質疑で消防を取り上げさせてもらいました。
質問後は思った以上の反響でしたのでブログに記載させていただきます。
皆さん、日ごろはあまり消防のこと考えたことってないと思います。
と言いますか、消防士や救急隊などにはあまりご縁が無い方が、社会としてはいい社会ですので考える必要が無ければそれに越したことはない。
しかし、今年は東日本大震災から10周年。
最近は豪雨や台風など激甚化していますし福岡は地震の脅威も常にありますから、このタイミングで消防に思いを馳せるのもいいかもしれません。
そこで、今回の補足質疑をベースに、福岡市消防の現状についてお話したいと思います。
まず基本的なことですが、消防というものは火を消し、救急患者を搬送するだけが仕事ではありません。火を消し救急患者を搬送するのは「警防部」の仕事。そしてもう一つが、日頃から建築物に足を運び消防設備の点検や防火管理者への指導など火災予防に従事する「予防部」の仕事です。
消防の仕事は大きく分けてこの2つ。
そして今回は「警防」についてお話します。
大前提として、日本の消防というのは、消防組織法において、第6条「市町村はその区域内の消防を十分に果たす責任を有し」、第7条「市町村の消防は条例に従い、市町村長がこれを管理し」、第36条「市町村の消防は消防庁長官又は都道府県知事の運営管理又は行政管理に服することがない」などと規定されており、市町村消防の原則のもと自主性を確保するのと同時に責任の所在が市町村に属することを明確にしています。
つまり、消防組織を生かすも殺すも自治体の裁量次第。ですので、様々なデータを比較してみると一目瞭然ですが、自治体ごとに全く違う数字が出てきます。
まず、職員定数について。そもそも、ここが問題です。
早速、他都市との比較ですが、人口が同規模の政令指定都市と比較してみましょう。
札幌市1,733人
川崎市1,424人
京都市1,843人
神戸市1,434人
それに対して福岡市は1,101人。しかも、その充足率は94.3%。
地域事情がありますので(例えば京都市は重要文化財が多いから手厚いなど)、一概に比較はできないかもしれませんが、それにしても福岡市は少な過ぎる。
続いて、福岡市の予算に占める消防局予算の割合の推移を見てみます。
平成28年度 2.0%
平成29年度 2.5%
平成30年度 1.7%
令和元年度 1.7%
令和2年度 1.7%
そして、コロナ禍にあえぐ令和3年度はさらに下がって1.4%です。
毎年、予算も削減されています。
要するに、人が少ない上に、お金もかけてもらえてないということです。福岡市消防局の置かれている状況が少しは理解いただけたと思います。
そうなると人も金も無くて災害時など大丈夫なのか!?と心配になる方もいるかと思いますが、そこはさすがに160万都市の消防局。しっかり体制は整えられていました。
・大規模災害発生時の初動マニュアルの整備
・福岡市消防だけでは対応できないような災害時の他市町村への応援要請基準を定めたマニュアル策定
・市災害対策本部との連携体制の構築(平常時より市民局へ消防職員を派遣するなど、連携の円滑化に努めている)
・各種の総合防災訓練を通じて警察、自衛隊、海保などの装備品・資機材の把握をするなど連携強化を図るとともに、防災機関だけでなく石油コンビナートなどとも連携体制を構築。
・事前協定については、自治体間同士で災害に関する相互応援協定を締結している以外にも、福岡国際空港株式会社と航空機事故について、また、福岡海上保安部と船舶火災等について協定を締結。
などなど。
また、東日本大震災のように福岡市消防局が壊滅的な被害を受けた場合も
・福岡都市圏市町消防相互応援協定や福岡県消防相互応援協定による応援でも対応ができない甚大な被害が発生した場合については、全国から応援を受ける緊急消防援助隊の出動を要請することとなるが、応援要請については、震度5強以上の地震が発生し、死傷者が多数発生した場合や、福岡市内で15件以上の火災が同時に発生した場合などで、消防局長から市長に緊急消防援助隊の応援要請を行う旨の報告を行い、市長の承認後、県知事から消防庁長官に緊急消防援助隊の出動を要請することとなる
と、少し分かりづらいですが、とんでもない災害の時は全国から消防が即応援に来てくれる体制は整備されています。
その他にも色々と質問しましたが、結論としては、大規模災害発生時でも政令指定都市の消防局として最大限の能力を発揮できる体制が取れていることが今回の質疑で確認できたました。
ただ、電柱倒壊や倒木などによって、救助活動に支障をきたす可能性は消防局も認めています。そこは、無電柱化を所管する道路下水道局や水源涵養林を所管する水道局などとの連携を密にし、災害時対応の視点からも早急に取り組むよう要望しておきました。(電柱倒壊や倒木による道路封鎖は当然起こるものと想定し日々訓練しています、という消防士からの力強い言葉は頂いていますが)
日々どんなに厳しい訓練をしていても、想定外の災害が珍しくもない今の世です。常日頃から備えていても、「実際に災害が起きんと分からん」というところも多分にあると思います。
「ちゃんとやってますか?」といくら質問しても「ちゃんとやってます」と答弁されれば突っ込みようもなく、最近は福岡市も大きい災害は起きていないので検証もしようがない。信用に値するかどうか評価は別れるかもしれませんが、個人的にはここは一つ福岡市消防の消防力を信頼してゆだねてみてもいいと思いました。
少なくとも、福岡市の消防職員は高い使命感のもと厳しい訓練を積みながら準備を怠ることなく備えています。
今回一から福岡市消防について勉強しましたが、そのことはよく分かりました。
さて、ここまでは主に「警防」に関する話でした。問題は「予防」です。仕事が手ぬるいとか頑張りが足りないという話ではなく、根本的な組織編成上の問題があります。そのことについてはまた次回、「火災予防行政」の課題についてお話したいと思います。