年に一回の一般質問。市政にかかわることなら何でも執行部に質すことができる一般質問。自分の思いを最大限にぶつけられる一般質問。
そんな一般質問の会派内での出番が今議会で回ってきました。
さて、何を取り上げようか、なんてことは考えません。
すでに昨年からやるぞやるぞと手ぐすね引いて待っていたネタがあります。
福岡市の観光です。それもゴリゴリの地元、糸島半島の西区北崎の観光地化についての質問です。
福岡市外の方は、ぜひ、googlemapで「糸島半島」と検索をしてからお読みください。

コロナ禍も下火となってきた今日この頃、これまでの巣ごもり生活から巣立つように、どんどんと観光を活発化させる動きがあちこちで出てきています。実験的に外国人団体観光客を受け入れるようになり、福岡市でも5月には3年ぶりに「どんたく」が開催され、そして7月にはこれまた3年ぶりに博多祇園山笠の「舁き山笠」が開催されます。
その福岡市の二大巨頭に時期的に挟まれたこの6月議会。観光についての質問とは何てタイムリーなんだろうと自画自賛していましたが、私が取り上げるのはそういった天神や博多といった都心部の観光ではなく福岡市の郊外、要するに田舎の観光地化についてです。

世界の潮流として、現在「持続可能な観光地」という概念が浸透してきています。サスティナブルツーリズムとも言いますが、何だか漢字でも横文字でもよく意味が分からないかもしれませんが、つまり、「住んでよし、訪れてよし」の観光地と言うことです。オーバーツーリズムによって当該地の住民生活に影響を及ぼさぬよう最大限に配慮しながら、住民にも観光客にも優しい観光地となることが求められています。

そこで、私の住むところのご近所の糸島半島なのですが、この糸島半島というところは海や山などの豊かな自然景観や、新鮮な農水産物、歴史・文化資源など様々な地域資源を有しているポテンシャルを秘めたエリアです。コロナ禍によって人々の生活様式も大きく変わりましたので、都心部でのショッピングや飲食店、テーマパークなどといったこれまでの観光だけでなく、田舎でのんびりと自然に身を委ねながら贅沢な時間を過ごす観光というものも脚光を浴びるようになってきました。糸島半島は福岡市中心部から小一時間で来られるということから、これから福岡市が都心部だけでなく郊外の観光に力を入れようというのはいたって合理的な判断であり、地域住民からしても過疎化や高齢化に悩んで来ていましたので、観光客が来てお金を落としてくれて、雇用創出や定住化にも繋がり活性化するということは願ったり叶ったり。
そういう背景から、福岡市は今回私が取り上げた福岡市西区北崎と福岡市東区志賀島を集中的に観光地化する「Fukuoka East&West Coastプロジェクト」というものを立ち上げて事業に取り組んできました。

が、これまでただの田舎だったところを観光地化するというのはかなり大変。というか、かなりきめ細やかに配慮しながら事業を進めないと、観光客と地域住民とのバランスが取れず、コロナ前の観光需要がピークだった頃観光地各地で問題になっていたオーバーツーリズムになってしまいます。こうなると「持続可能な観光地」どころではありません。行ってはみたものの楽しい思い出ができなかった「がっかり観光地」となってしまいます。
そんな危機感から今回質問をしました。

そこで今議会では、「Fukuoka East&West Coastプロジェクト」のうち私の地元である西区の「West Coastプロジェクト」に焦点を当てて質問をしました。
ポイントは6つ。この6つは、今回の質問にあたって事務所スタッフと私で地域への聞き込み、関係各所へのヒアリング、他都市視察などを経て導き出したものです。
①イメージ戦略
②渋滞対策
③サイクリスト対策
④公共交通対策
⑤ゴミ問題対策
⑥糸島市との連携
です。それぞれ、質問と答弁を参考にしながら、解説していきたいと思います。

まず、①イメージ戦略について。
観光地とイメージ、というのはかなりの関連性があります。観光分野の研究では、イメージが明確な観光地ほど選ばれる確率が高まることが証明されています。
つまり、富良野とか、箱根とか、有名な観光地はイメージが鮮明に浮かんで、そして行きたいという欲求に駆られるようになっています。なるほど、言われてみれば確かにそうです。
では、西区北崎はどうでしょうか。
【経済観光文化局】
〇海辺空間には、美しい海岸線やフォトスポット、おしゃれなカフェ等が集まる魅力的なエリアがあると認識している。

そうなんです。西区北崎は実にいいところなのです。

しかし、大切なのは「プロジェクト」と大風呂敷を拡げたからには、このイメージが市役所各局で共有され、そして何より地域で共有されていなくてはいけません。でないと、イメージの定着なんて夢のまた夢です。
そこで、この質問です。
【田中質問】 
観光施策を進めるには、関係者でのイメージ共有がまずは大事かと思うのですが、庁内や地域でどのように図られているのかお聞かせください。
【総務企画局】
〇関係課長会議等の開催により、庁内でプロジェクトの趣旨やイメージを含む事業内容等の情報共有を図っており、引き続き連携を図っていく。
〇地域に対しては、地元自治協議会や農協・漁協の代表者等に事業内容等を説明するなかで、イメージの共有は図られていると認識している。

イメージ共有はできているそうです。
では実際どうなのか、そこで、West Coastプロジェクトに関連して進められる海釣り公園リニューアル事業について、所管局である農林水産局に質問しました。
【田中質問】
海釣り公園リニューアル事業は、共有されたイメージに沿ったものと理解してよいのかお答えください。
【農林水産局】
〇Fukuoka West Coastの魅力をアピールする立寄り拠点となるよう、地域との協議を積み重ねるとともに、関係局と連携し、検討を進めている。

この質問に対してこの答弁。皆さんどうお感じになりますか。
私にははぐらかしているようにしか聞こえません。
この海釣り公園リニューアル事業については、2月議会の経済振興委員会で概要が示されましたが、局の説明では「南国のように」と、それこそ具体的な表現がありました。しかし、今回のこのイメージに関する質問ではどの局のどの答弁にも「南国」という言葉は出てきません。これ一つ取っても、果たしてイメージの共有が全庁的にできているのか疑問なわけです。
さらに言うと、このイメージを定着させるには地域との共有も不可避なわけです。地域との共有がされていなければ、観光施設ができる際にバランスを欠きますし、これは訴求効果にもかかわってきます。
例えば、市は「南国のように」としながら事業を進めても、民間事業者がそのエリアに作る観光施設が北欧風であったり、飲食店が売り出す食事が刺身定食なら一体感を欠いた観光地となってしまいます。
なので、他では地域の農林水産業者や商工業者、交通事業者、観光事業者、市民団体など多様な関係者による会議体を設置することで相乗効果のある事業連携を図り、イメージの共有や発信のみならず観光施策全般で効果をあげている自治体もあります。West Coastプロジェクトにはこういった外部会議体はありませんので、市が主導してこういった会議体を設置するよう要望しました。

次に、渋滞対策。
糸島半島の北崎が急激に観光地化したことで、最近は随分と車が増えました。本州から来たと思われるようなナンバーの車もよく見かけます。そうすれば当然、渋滞が発生します。
特に、糸島半島のメインどころ二見ヶ浦では、駐車場に入れない車による渋滞が悪化しており、ここら辺の住民には「休日には二見ヶ浦には近づきたくない」と言う人までいました。
こうなると、完全なオーバーツーリズムです。要するに、入れ込み客数と観光インフラのバランスが取れていません。
そこで、この質問。
【田中質問】
駐車場に入れない車両による混雑について、どのような対策を行っているのかお伺いします。
【経済観光文化局】 
〇二見ヶ浦海岸における交通混雑対策として、民間事業者等と連携しながら、交通指導員の配置や駐車場の満空情報の配信、E-BIKE等二次交通を活用した周遊促進などの対策を行うとともに、二見ヶ浦海岸における交通混雑の緩和や北崎地区の周遊促進に資する立ち寄りスポットについて検討している。
〇また、公共交通機関の利用促進に向け、公共交通機関の情報発信や、乗り入れる路線バスの増便に向けた協議を行ってきたところ。

対策は取っているとのことですが解消してないんですよね。だから地域住民は困っているわけでして、さらなる対策が必要です。
そこで、執行部へ提案をしました。
➀パーク&バスライド、これはマイカーで最寄のバス停まで行き、バス停備え付けの駐車場に駐車、バスに乗り換えて目的地に向かう乗り換えシステムですね。
➁駐車場の事前予約制
➂混雑時間帯を避けた観光客へのインセンティブの付与
これは他都市でも効果をあげている渋滞対策です。
ぜひ導入していただきたいところです。

続いてサイクリスト対策です。
健康志向、環境保全、コロナ対策などの理由から、最近ではスポーツ自転車を楽しむいわゆるサイクリストが増加してきています。大いに結構なことですが、しかし、これが地域住人と軋轢を生むこともしばしば。
ビュンビュン飛ばす自転車に危険を感じる住民も少なくなく、時に重大事故に繋がることもあります。
West Coastプロジェクトも御多分に洩れず、市としてもサイクルツーリズムを推進しています。
しかし、北崎エリアではこのサイクリスト対策がほとんどできていないのが現状です。
【田中質問】
West Coastプロジェクトのエリアでは、サイクルツーリズムの「福岡・糸島ルート」として福岡志摩前原線が対象となっていますが、そのうち市が管理する区間の延長、その中で自転車通行空間整備が完了している距離をお示しください。
【道路下水道局】
○「福岡・糸島ルート」となっているにおける福岡志摩前原線のうち、市が管理する区間の延長は、今宿交差点から糸島市との市境までとなっており、その延長は約12.7kmとなっている。おり、
○そのうち市境から約0.7kmの区間の海側において、自転車通行空間の整備を完了しておりを整備しているが、残る山側については、令和4年度の完了を目指し、無電柱化にあわせて整備を進めている。

下のパネルを見ていただければ一目瞭然ですが、

道路の黄色部分が自転車通行空間が整備されているところなのですが、糸島半島ではほんの少し12.7㎞のうち、0.7㎞しか自転車通行空間が整備されていません。市は「糸島半島は景色がいいからぜひ自転車で楽しんで!」って言っているのに。
そこでこの質問です。
【田中質問】
サイクルツーリズムを推進するならば、自転車通行空間の整備をもっと集中的に進めるべきと考えますが、ご所見をお聞かせください。
【道路下水道局】
○福岡志摩前原線については、今宿交差点から今津橋までの延長約2.0kmの区間において、今年度から自転車通行空間の整備の調査検討に今年度着手するを行うこととしている。
○残る区間については、地形上、道路の幅員が狭いく地形上の制約から拡幅も困難な状況であるためが、交通管理者などと協議し、安全な自転車通行空間の整備手法について検討していく。

安全確保のためのご検討はいただけるようですが、しかし、このペースで一体あと何年かかるのか。
地理的な条件で道路の拡幅などには相当な時間がかかることは理解できますが、それにしてもとモヤモヤします。
福岡市はこれまで、天神や博多など交流人口の多い地点を集中的に自転車通行空間の整備を行ってきました。それも合理的な理由として分かるんですが、やっぱりモヤモヤ感がつきまといます。
これだけ、自転車通行空間の整備に時間がかかるのであれば、やはりサイクリストに交通マナーを守ってもらうしかないのですが、そこでまず執行部へ提案をしました。

他都市で導入されているサイクリストへの注意喚起表示です。
私もうっすらと気付いてはいたのですが、北崎エリアにはこういった注意喚起表示がありません。これも驚きですが。
そこで、下記のようなパネルを議場で提示して執行部に質問しました。

【田中質問】
サイクリストのマナー向上の取り組みについて、West Coastプロジェクトではそのあたりの対策はどのようになっているのか、具体的にお示しください。
【経済観光文化局】
〇サイクリスト向けのマナー向上については、現在、自転車販売店へ交通ルールの周知の依頼や、北崎地区でのE-BIKE貸出の際のマナー動画視聴などを行っているが、注意喚起板などについては、地域から要望があれば、設置について検討。

この注意喚起表示についてはご検討いただけるみたいですが、「地域から要望があれば」という一言に何だか執行部の「お前に言われたからやるということじゃないんだぞ」という強い意志を感じてしまいました。が、やってくれるのであればそれは良しとしましょう。

続いて公共交通対策。
これはどういうことか。要するに、バス交通の充実です。
糸島半島に電車はありません。なので、北崎を含めた糸島半島を観光で楽しむには自動車、自転車、バス、というのが主な交通手段ということになります。因みにですが、この交通手段が全て地域住民の頭痛の種になっているのはこの質問を進めている通りなのですが、そういう状況です。
では、バスの何が問題なのか。これは地域住民と観光客の両方から改善を求める声が多く上がっていました。
まず地域住民ですが、「観光客でバスが混雑するようになった」「混雑するから一本見送ることもある」と、こういった声です。
一方で観光客はというと、「本数が少ない」「糸島半島を周遊する路線が無いから乗り換えが面倒」こういった声になります。
このエリアは昭和バスさんが運行を担っているのですが、しかし、昭和バスさんも民間会社でして、このコロナで多大な影響を被っています。大変厳しい。
先ほどの観光客の声に「糸島半島を周遊する路線が無いから乗り換えが面倒」というのがありましたが、昭和バスさんも観光客向けの糸島半島周遊バスを走らせる余裕がありません。
下のパネルをご覧ください。先ほどのサイクリストの話の部分で出てきた糸島半島のパネルです。

糸島半島だけで路線が3本あります。元々この地は有名な観光地ではありませんでしたから、走っているバスも地域住人の生活パターンや利用状況に合わせて設定されているものです。
要するに観光目線ではありません。なので本数も少なければ周遊する路線もない。
北崎エリアの観光地化は最近のことですから、まだまだ今後どうなるか分かりません。そうすると昭和バスさんとしても採算が不透明な路線に投資するのはなかなか難しいわけでして、
そこで私の質問
【田中質問】
West Coastプロジェクトを推進する市が(昭和バスさんに)支援策などを講じるべきと思いますが、ご所見をお聞かせください。
【経済観光文化局】
〇昭和バスにおいては、ハイシーズンなど、乗客が特に多い時に、臨時バスを出すなどして対応していると聞いており、また、7月21日より本エリアへ新路線も運行開始されることとなっており、市としても定着に向け情報発信等協力をしていく。
今後とも、バス事業者と連携を図りながら、観光の活性化と地域住民の生活が調和した観光振興に取り組んでいく。

はっきり言って他人事です。市が「糸島半島には公共交通を使って来てください!」と言っているのに。
なので、私は再再度執行部へ提案をしました。市が福岡市の都心部で走らせている観光周遊バス、「オープントップバス」を走らせましょうよ、と。
そういったバスがあれば、観光客と地域住民との棲み分けも可能となり、地域住民は観光客で混雑するバスに悩まされることはありませんし、自動車の流入抑制と環境負荷の軽減もできます。そこで質問。
【田中質問】
ぜひ、観光周遊バスを運行してみてはいかがかと思いますが、ご所見をお聞かせください。
【経済観光文化局】
〇7月21日より昭和バスの新路線「ウエストコーストライナー」も運行開始されることとなっており、市としても自動車によらない観光を広げていけるよう、まずはこの路線の定着に向け情報発信など協力をしていく。
〇北崎への交通手段については,地域に過度な負担がかかることがないよう,利用者の動向を注視しながら,事業者とも引き続き協議していく。

やっぱり昭和バス任せのようです。しかも周遊バスの話をしているのに「天神から直で二見ヶ浦に行けますよ」という新路線の話をしています。質問に答えていません。
何度も言いますが、市が「糸島半島には公共交通を使って来てください!」と言っているのに。
バスが不自由だとどうしても観光客も地域住民も自動車に頼らざるを得ません。先ほど渋滞対策について書きましたが、自動車が増えれば渋滞も悪化しますし、しかも、福岡市は2040年度に温室効果ガス排出量実質ゼロのチャレンジを掲げており、環境局は、現在改定を検討中の「福岡市地球温暖化対策実行計画」において、自動車部門の温室効果ガス削減と公共交通の利用を進めています。そこでこの質問。
【田中質問】
郊外の観光地化が進んで自動車が流入してくるのは環境の面からも決して好ましい状況ではないと思うのですが、環境局のご所見をお聞かせください。
【環境局】
〇改定を検討中の「福岡市地球温暖化対策実行計画」において、温室効果ガス削減に取り組む重点部門に「自動車部門」があり、観光地への移動を含む自動車走行時に排出される温室効果ガス削減に取り組むもの。
〇主な取組みとして公共交通機関や自転車、徒歩などの利用や二酸化炭素を排出しない電気自動車や燃料電池自動車への移行など「自動車の脱炭素シフトの推進」、「シェアリング等の推進」を掲げている。

環境局はこれ以上福岡市で自動車が増えるのは好ましくない、との見解です。経済観光文化局も先ほどの渋滞対策に関する質問への答弁で明確に「公共交通の促進」を謳っています。
なのに、バス確保は民間事業者任せという姿勢。いかがなものかと思います。抜本的な公共交通対策をしっかりと要望しておきました。

次にゴミ問題です。
West Coastプロジェクトの売りの一つ、それは、「美しい海岸線」です。では、この美しい海岸線はどのように保たれているのでしょうか。
【田中質問】
(本プロジェクトに該当する)西浦や大原海岸の清掃について、その所管はどこかご説明ください。
【港湾空港局】
〇西浦地区及び大原地区の海岸は、海岸法に基づき福岡県が海岸管理者となるため、清掃についても県の所管である。

所管は県である、と。だから清掃も県がするものだと、それが福岡市の見解です。
これは、法令に基づくものですから仕方ありません。しかし、現状では県の清掃だけでは海岸の美化は保たれません。なので、このエリアでは実に多くの団体がボランティアで海岸清掃をしてくれています。そこでこの質問。
【田中質問】
自主的に清掃していただいている団体に対してどのような支援を行っているのかお示しください。
【環境局】
〇海岸清掃に自発的に取り組まれている団体に対しては、その活動を支援するため、清掃用具の貸し出しや集められたごみの収集を行うこととしているほか、ラブアース・クリーンアップや地域ぐるみ清掃の一環として行う場合などは、専用ごみ袋の提供を行っている。

私は昨年の一般質問で、環境美化に取り組む団体に対しての積極的な支援を求めました。しかし、支援内容は変わっていません。
美しい海岸線はWest Coastプロジェクトの生命線。その生命線が多くのボランティアで保たれている。その支援策がゴミ回収やゴミ袋の提供だけでは、プロジェクトを推進する市として他人事すぎではないでしょうか。そんな強い思いを込めて、以下の質問をしました。
【田中質問】
プロジェクトと言うのであれば、各団体と連携して海岸線美化のためのプロジェクトを立ち上げるなど、もっと積極的な施策を展開すべきと考えるわけですが、改めて環境局のご所見をお聞かせください。
【環境局】
〇海岸の清掃については、それぞれの海岸管理者により行われるべきものと考えている。
〇地域団体等が自発的に行っている海岸清掃が、海岸線の美化に貢献していることも認識しており、引き続き実施団体の意見も伺いながら支援に取り組んでいく。

なかなかの突き放した答弁です。どうも、この点については環境局とは一致点を見出すことはできないようです。

「持続可能な観光地」これは現在の世界的な潮流です。
であるならば、このプロジェクトは、専門的に言うところの「環境配慮行動」、これをコンセプトの中心に据えるべきと私は思っています。
環境配慮型先進バスによる観光周遊と車利用抑制、環境に優しい自転車利用を促すための自転車通行空間の充実、公共交通や自転車での来訪者への特典などの付与、環境保全に貢献している方への手厚い支援、新たに建物を建設する際の環境配慮建築物の促進など実現可能な施策はいくらでもある。そこで環境に関する最後の質問として以下をぶつけてみました。
【田中質問】
East &West Coastプロジェクトは環境に徹底的に配慮したプロジェクトとして明確に打ち出すべきだと思いますが、これについては、観光振興の旗振り役である経済観光文化局にお伺いしたいのですが、いかがですか
【経済観光文化局】
〇地域や市民生活と調和した持続可能な観光の振興は重要であると認識しており、本プロジェクトにおいても、事業者と連携しE-BIKE導入等に取り組んでいるところ
〇今後も、関係局と連携しながら、環境にも配慮した、持続可能な観光振興に取り組んでいきたい。

環境への配慮は重要という意識はあるようです。しかし、このプロジェクトの中身を見渡すと方針としても施策の内容としても目に見える形にはなっていないということを指摘しました。
観光客を受け入れながら環境保持に先進的挑戦的に取り組みつつ、観光資源と住民生活の両立を実現できるものとなれば、それは観光地としての新たな付加価値、イメージ向上へと繋がりますので、環境配慮への積極的な施策を要望しておきました。

最後に糸島市との連携です。
まずは、この写真をご覧ください。

道路の舗装が見事に違います。なぜなら、ここが市境だからです。手前が福岡市で奥が糸島市。
地図をご覧いただけば分かると思いますが、この糸島半島は福岡市と糸島市で二分されています。つまり、糸島半島に観光に来るお客さんは福岡市と糸島市両方で楽しむことになります。
ということで、糸島半島の一体的な観光地化には糸島市との連携が不可欠なわけです。そこで質問。
【田中質問】
West Coastプロジェクトに関して、糸島市とはどのような連携体制が取られているのかお示し下さい。
【経済観光文化局】
〇二見ヶ浦海岸における交通混雑対策やサイクルを活用した周遊観光モデルルート形成などを連携して実施している。
〇今後も情報発信含め、エリア全体で観光振興を図るよう、取り組んでいく。

率直に言って、部分的すぎです。行政が違えば当然、施策の方向性や進捗にも違いが出てきます。まさに先ほどの道路のように遊びにきた観光客にはちょっと理解ができないような違いが出てきてしまうわけです。
福岡市は政令市ですから、市街化調整区域の規制緩和なども含めて様々な観光振興策を打つことができますが、一般市である糸島市ではそうはいきません。
そうするとどうなるか。観光客が福岡市側に集中して糸島市が取り残される可能性も否定できません。これは糸島市民から聞いたお話ですが、福岡市だけ開発が進めば糸島市のお客を取られてしまうと、そう心配していました。ここはやはり観光客を奪い合うのではなく、相互に潤うような振興策が必要と思うわけですが、そこで質問。
【田中質問】
先ほど、連携は取れているとのご答弁ではありましたが、そういう局所的な話ではなく、もっと大局的に糸島半島の一体的な観光地振興という視点で糸島市との連携体制を組織的に構築していくべきだと思うのですが、ご所見をお聞かせください。
【経済観光文化局】
〇糸島市とは引き続き意見交換を重ね、糸島半島全体がより魅力的な観光エリアとなるよう、情報発信等、今後も連携をしていきたい。

やっぱり具体的な答弁は返ってきません。
そこで、また執行部へ提案をしました。
自治体間の観光協定です。一般的に観光協定というものは、自治体と大学や企業という形で見られますが、自治体間の観光協定も存在します。
今回の質問にあたり、私はその観光協定によって実績を上げた山口市に個人で視察に行ってきました。山口市はお隣の宇部市と観光協定を結び、共同で事業を行うなど積極的な観光振興策をとっています。その山口市で担当者にお話を聞いたのですが、「協定」という錦の御旗ができたことで観光施策に関する協議がスピーディーにできる。何よりも、市長の意気込みが内外に伝わり、機運醸成に繋がった効果は大きいとのことでした。因みにこの山口市と宇部市の観光協定は現在は近隣7市町村にまでその範囲を広げた上に観光の枠を超え定住化促進や企業誘致などのにも取り組んでいます。これも一つ、観光協定の効果を裏付ける証左になるのではないかと感じていますが。
そこでこの観光協定についてその可能性を質しました。
【田中質問】
糸島市との観光協定について、ぜひご検討してみてはいかがと考えますが、ご所見をお伺いします。
【経済観光文化局】
〇現状糸島市とは情報共有を図りながら、交通混雑緩和や周遊促進など事業を進めているところであり、現在観光協定という形をとることは考えていないが、引き続き、糸島半島全体が魅力的なエリアとなるよう、情報発信等について、連携して取り組んでいく。

これも積極的には考えてはもらえないようです。糸島半島の観光振興について両市でその将来像を共有し、同じ方向性のもと一体的な観光振興を進めれば観光地ブランドも向上すると思うのですが。

私がこの質問を通じてあぶり出したかった事。
それは、福岡市の観光施策の「ちぐはぐ感」です。
「渋滞しないように公共交通を利用しましょう」と言いながら、周遊バスを走らせようとしない。
「環境を考えて車の排出ガスを減らしましょう」と言いながら、民間バス事業者への支援もしない。
「自転車で楽しんでください!」と言いながら、自転車通行空間帯の整備は後回し。注意喚起表示も無い。
「美しい海岸線を見てください!」と言いながら、その清掃はボランティア任せ。そのボランティアへの支援も手薄。

本気で観光地化を進めようとするならば、地域住民への配慮を念頭に、観光客受け入れのためのインフラ整備を積極的にするべきです。
しかし、全庁一丸でとしている割には、このプロジェクトに紐づいた事業が少なすぎます。
率直に言って各局が同じ方向を向いているようには見えません。

なぜか。私なりに考えましたが、結局はこのWest Coastプロジェクトのビジョンが無いからです。
綿密な調査をした上で、住民にも観光客にも負担感のない入込み客数を設定し、それに向けて何をいつまでにどうするのか、最終的にどういう観光地にするのか、そういうビジョンが無い。
だから、対応も後手後手。
これは、視察先の観光庁の担当者からのヒアリングで聞いた話ですが、
「今後の観光需要がどのように変化するか、それは予測困難。しかし、しばらくは国内観光が主になるのではないか。
そうすると、国内観光地間の競争が激化する可能性があり、今のうちから時代やニーズに対応をしていかないと取り残される観光地も出てくるだろう。
その為には、現状分析、目指す姿、具体的な取組、進捗管理するための指標を明確にしたヴィジョンが必要である。」
ごもっともです。
しかし、それがこのプロジェクトにはない。そこが一番の問題であると市長に対して声を大にして述べました。
まだ日が浅いプロジェクトですから、だからこそ、今のうちに明確なビジョンを打ち出し、各局の役割分担を明確にしてPDCAサイクルを回していけば、さらに素晴らしい観光地へとなるのではないでしょうか。
地域住民の期待も大きいプロジェクトですから、やるならちゃんとやってほしい。それが切実な思いです。
「来てください」と言うばかりで将来像も見えない、受け入れ態勢も不十分では、困るのは地域住民と観光客です。
これではリピーターも来ません。
残念な言い方ですが、観光客の期待を裏切るような観光地を「がっかり観光地」という言い方をします。
それは、観光の目玉が思ってたよりもインパクトあるものではなかった、という他に「たどり着くまでに渋滞に悩まされた」「交通手段が乏しくて行くまでに疲れる」「泊るところのクオリティが低い」
こういった理由で「がっかり観光地」にされてしまうところも存在します。
「今津北崎を「がっかり観光地」にはしてほしくない。
観光地化するのであれば、地域住民と観光客の双方が気持ちよくいられる「住んでよし、訪れてよし」の北崎にしたい。その思いから、ぜひ明確なビジョンの策定を強く要望しました。

実に長いブログとなりました。
思いの丈が溢れた結果とご容赦ください。
今回の質問では、当局からの前向きな答弁はあまり聞けませんでした。聞けなかったどころか体よくはぐらかされた答弁でした。個人的には実にがっかりでした。
温度差ばかりが際立った質問となってしまいましたが、しかし、その溢れる思いを行政にぶつけられただけでも価値はあったかなと思っています。
ただの郊外だったところを観光地化するというのは大変なことです。観光というものが地域社会や地域経済に与える影響はとても大きい。ゆえに行政の責任は限りなく大きい。
この自覚を持って福岡市当局も本気で北崎を含む糸島半島に向かい合って欲しいものです。

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